収入ダウン

安定した給与収入があるサラリーマンの方々でも、キャリアの中盤から後半で突然給与ダウンに遭うケースが少なくありません。自身の年齢や収支状況・所属する組織の人事体制にも注意する必要があります。

役職定年によって給与収入が下がってしまった Aさん 50代

某自動車メーカーに勤めて30年近くになります。大学卒業後、全国への出張や転勤、海外派遣など多くの機械に恵まれて、部長クラスにまで上がりました。同期に比べると出世競争に負けることなくついていくことができ、リーマンショックにも振り落とされずに今日まで来たと思います。
所有する自宅は「23区内の分譲マンション」です。2000年に約7000万円で購入し、妻と大学生・高校生の2人の子どもの4人家族です。
 
しかし、海外経験の豊富な経営陣に代わったことでキャリアが一変。“役職定年を導入する“と宣言し、撤回することなく実行されました。一定の年齢を超えていた私は役職を外れ、役職手当が削られてしまったのです。
正直、会社の風土にも問題がありました。経営陣が変わったことで社員に強く市場価値が求められる風潮が強くなったのです。出向先への斡旋も一掃されてしまいましたし、基本的なスタンスは「自分の力で仕事を探せ」という雰囲気に変わりました。
二人の子供が巣立つまであと数年なので我慢できればよいのですが、正直なところカツカツな状況です。

…企業によっては一定年齢で役職から外れる人事制度「役職定年」があります。仕事に対するインセンティブではなく、ポジションによる役職手当によって収入が支えられているのであれば、役職から外れたあとで人事評価が大きく変わってしまうことも考慮すべきです。

会社の倒産で収入が途絶えてしまった Bさん 40代

17年前に35年ローンを組んで購入しました。5会社に勤めていました。役職は課長に近いくらいでした商品の品質にはこだわりがあり、時には社長自ら宣伝や広告を買って出ることもあり、勢いを感じる会社でした。
一時期は会社の業績も好調で、ボーナスが3~4年ほどは上がっていった感じです。業績が好調だった時には打ち上げもなかなか豪華で、周りの社員も羽目を外すだけの余裕もありましたね。その時に妻と住むために中古の分譲マンションをリフォームして購入しました。住宅ローンの融資を受けて、合計2000万円を借りました。低金利に惹かれたこともあり、余裕のあるプランを組んだつもりでした。
しかし、自社の商品が食品表示法に違反していたことが判明してから状況が一変しました。リコールや返金・損害賠償請求に追われ、赤字の計上が続いたのです。いつしか給料の支払いにすら苦慮する事態となっていったのです。
最終的に経営は破たんしました。民事再生の道も模索したようですが、思った以上に経営状況が良くなかったようでした。私は転職活動をして新たな雇用先を探していますが、ローンの支払いも重荷になって。気が気ではないです。

国際的な競争激化によって、日本企業では組織のスリム化や経営の立て直しが進められています。この事情の中で早期退職やリストラに巻き込まれるケースです。特に40~50代の人々にとっては急激に収支状況が変わる危険性をはらんでいます。

また、企業の経営状況も重大なポイントです。数カ月の給与未払いや最悪のケースでは企業倒産によって労働収入が途絶え、ローン支払いが一気に滞る可能性も否定できません。

残業代の削減で収入が減ってしまった Cさん 40代

金融機関に勤めている48歳・男です。妻と3人の子どもと住むために融資を受けて、10年前に8000万円・4LDKの分譲マンションを購入しました。当時は順風満帆だと思ったものですが、まさかの事態に愕然とする気持ちです。
大手銀行ということもあり、基本給や役職給は堅調そのもの。当時の手取りで70万円は越えていました。住宅ローンの相談を進めた際に「このくらいの年収です」と私が話すと、「ではこの規模の物件が購入できます」と用意いただいた選択肢の中だけで選ぶことをしてしまったのです。月当たりの住宅ローンは20万円と決めました。
教育費や老後の資産を確保するために残業込みで働いていました。月あたり平均で50時間程度、繁忙期には100時間に迫ることもありました。
しかし、昨今の働き方改革で状況が一変。上層部から一定の時間で強制退勤するように決まったのです。行内の業務に関わる電気は全て消灯、パソコン作業もできないので自宅に持ち帰るなり時間内で終わらせる必要があります。


この結果、月々の給与は大きくダウン。手取りで40万円近くまで下落しました。薄々自覚はしていたのですが「自分の収入は残業によって支えられていた」のだと気づくべきだったと思います。たとえ収入が変動したとしてもなんとか対応できる額に抑えるのが、私が取るべき方法でした。
家族と顔を合わせる機会が増えたのは少し嬉しいのですが、正直なところ気持ちが落ちつきません。最悪のケースではマンションの売却も考えないといけないのでしょうかね…。

近年、労働環境の改善をめざす「働き方改革」が大手企業を中心に取り組まれています。その前にローンを組んだ場合には、残業代を含めて返済計画を組み立てたケースも少なくありません。もし月々の収入の多くが残業によって支えられているのであれば、早いうちに見直す必要があります。

ケガや退職・離婚などのアクシデント

不倫訴訟によって離婚し、住宅ローン残債を抱えた Dさん 40代

任意売却によって債務を整理することができた者です。子ども1人を育てています。
10数年前に、元夫との共有名義で都内に住宅を購入しました。夫が主債務者となり、私が連帯保証人です。
夫が借金を秘密にして抱えており、さらに浮気が発覚したことをきっかけに夫は家を出ていきました。弁護士を介して養育費などの離婚調停を進めているなかで、彼は自己破産を申し立ててしまいました。そのため私宛てで一括請求の督促状が届きました。いきなりこんな大金を支払えるはずもなく、競売しか道がないと考えこんでいたところです。
担当していた弁護士さんに相談したところ、任意売却という選択肢もあるということで進めることに決めました。物件を見積もってもらった結果、競売だと1500万円程度の売却額に対して、任意売却だと2300万円近くになるということで銀行側に合意していただき、2200万円程度で売却できました。
借金は250万円くらい残りましたが、分割返済を認めてもらったこと破産せずに済みました。その後に離婚も成立して養育費ももらえるようになったので、少しだけ余裕があります。日々の生活は大変なこともありますが、子どもが立派に大きくなるように頑張ります。

…パートナーとの共同によって住宅ローンを結んだ場合にも気をつけることがあります。それはパートナーの債務状況です。

上記のケースでは、夫に知らないうちに自己破産が必要な規模の借金ができ、さらに別居することで気が付かない状況になっていました。双方の経済状況 が分かりづらい状況に陥っている場合には注意が必要です。このような場合も、早い段階でパートナーが抱えるリスクも考慮して弁護士などに相談を進めるのがおすすめです。

家族のケガ・病気による家計圧迫で支払いに苦しむ Eさん 53歳

事業を営んでいる夫が購入した一軒家に住んでいます。26歳の娘が生まれた頃にローンを組んで購入したので、支払が終わるまであと10年を切っているくらいでしょうか。
先月、その夫が急性の脳梗塞に倒れてしまいました。幸い命に別条はなかったのですが、療養とリハビリに時間がかかるということでその仕事は休んでいる状態です。もしかしたら元のように仕事ができない可能性もあるようです。
しばらくの間、住宅ローンの支払いは貯金や私のパート収入で賄う予定でいます。もしまた別の病気が襲ってきて倒れたりなんかしたら…そう考えると、心配しかありません。

…仕事に打ちこむ現役世代の方に突然病気が襲ってくるケースがあります。病気やケガの治療が長引くことで家計が圧迫されてしまい、ローン返済が苦しくなることも十分に考えられるのです。万が一のためにもご家庭で契約している保険や収支状況も含めてチェックすることをオススメします。

定年退職による収支の圧迫

過去に任意売却でローンを整理した者です。地震災害に遭って当時住んでいた自宅が大きな被害を受けてしまい、その住み替えで分譲マンションを購入しました。幸い火災保険も適応されたので多少は購入費用に充てることもできました。購入当時は役所の職員で、将来の返済は当時の安定した収入と退職金・年金で返済できると見越していました。
しかし60歳で退職するときには想定していなかった事態がありました。長男が病気を抱えてしまい休職して同居状態に、次男が勤め先の倒産を受けて失業してしまったので退職金を生活費にあてざるを得ない状態になりました。

7年が経過して二人の状況は多少改善しましたがこの時の負担が重く、私は4回にわたってローン返済が滞ってしまう事態となりました。遅延金が重くのしかかって、退職金は底をつき返済に頭を悩ます日々が続きました。カッとなって大喧嘩になったこともあり重苦しい雰囲気のなか、思い切って法律相談所にかけあったところ、任意売却によって清算する方法があると伺ったのです。幸い任意売却が成立して、落ち着いたところで賃貸マンションに移ってささやかな生活を送っています。息子2人も仕事に復職でき、今後はのんびりと過ごすつもりです。欲を言えば、滞納した時点で相談するとよかったかもしれません。

定年退職後に住宅ローンの返済計画を立てている方も注意が必要です。“一寸先は闇”と言いますが急病や事故治療によって思わぬ費用が掛かってしまい、ローンの返済計画が崩れることも否定できません。購入後のライフプランは、アクシデントがあっても大丈夫でしょうか?ぜひ返済計画も見直してみましょう。

不動産投資の失敗

収益物件・収益不動産のローンが払えず投資に苦戦 Gさん 40代

化学系会社に勤めており、年収700万円強あります。妻と子どもが2人いることも含めて、老後の資金が足りなくなるのでは?と不安を感じていました。そこで会社の先輩が不動産投資をオススメしてきたのです。本人も都内に何カ所も持っているようで興味が湧いたのです。
そこで少し勉強したうえで投資用不動産を扱う会社に依頼し、都心のワンルームマンションを3部屋ローンで購入しました。オーナーチェンジ物件2つと、入居者がたまたまいなかった物件1つです。将来のための備えとして、またもし自分に何かあった時の為に残そうと思ったのです。ただ、このとき妻には断られると思って相談しませんでした。
出だしは順調で、月20万になるローンが家賃振込によって賄える経験をし、このまま行けば着実に資産になると信じて疑いませんでした。しかし、1年半後にオーナーチェンジ物件の一つから退去者が出てしまいます。家賃収入が減ってしまい、毎月7万円の赤字を抱えることとなったのです。年度末に迫る固定資産税も思った以上に重く、正直なところ整理しないといけないと考えています…。

将来の備えとして不動産ビジネスに参入される方もいらっしゃいます。安定した収入を元手にローンを組んで家賃収入を得る方法が人気を集めていますが、家賃が入らないリスクも考慮する必要があります。入居者が入らない状況が続くことでローン支払いが一気に止まってしまう可能性も含めて慎重に検討しましょう。

想定外の事態発生で税金支払が滞る Hさん 50代

貸しビル業を営んでおり、かつて収益ビルを3棟所有しておりました。新しく購入したビル一棟が立地条件も良く、修繕によってある程度の見込みが立つと判断して購入を進めました。
しかしある時、水道管の水漏れが判明し、さらに調査を進めるとアスベスト(石綿)が残されている物件だったのです。仕方なく施工会社に依頼して両方の瑕疵を直しましたが予想以上に費用がかさんでしまいます。
大掛かりな改装工事の期間の間、なかなか借り手がつかなかったこともあり、税金の支払いが遅れてしまい税金を滞納してしまう状態に。そのため他の収益ビル二棟が差し押さえられてしまい、テナントに対する補償金返還も難しい状態になった段階で相談しました。
任意売却を担当してくださった不動産会社には、幾度となく抵当権を抹消してもらえるように、また返済額を抑えられるように融資先の銀行に交渉を進めていただきました。最終的に、自宅周辺に所有したビルと隣町にある収益ビルは差押を抹消していただき、問題の物件は任意売却できました。
現在はビルを一つ買い替え、変わらず二棟の収益ビルを管理しています。自宅も競売にかかるような事態にならずに済んで、あの時の感謝はしてもしきれないです。

たとえ利回りが10~20%と記されるなどの好条件と思われる物件を購入できたとしても、喜ぶのはまだ先です。リフォームや管理会社との契約・トラブル対応による急な支出によって「実質利回り」が大きく下がってしまう場合があるのです。事前のリサーチなどを交えて、想定されるリスクにも対応できるように考慮しましょう。

低金利時代のワナや収支のリスク管理にも注意を配りましょう

いまは過去に類を見ない低金利となっています。住宅ローンを借りる側にとっては将来返済する額が大きく減るメリットがあり、多めに借りられる方もいらっしゃいます。しかし余力以上の借り入れを行ってしまうことで将来に大きな負担を残してしまうこともあるため返済計画には注意を払いましょう。そのためにも余裕を持った返済計画を立てることです。 また、想定外の事態によって思いもよらぬトラブルに直面するケースも考えられます。現在組まれているローンの返済プランには無理がないか慎重に確認し、いざという時の備えや選択肢も考慮することがオススメです。