一戸建てやマンションなどの住宅ローンを返済できなくなった場合には、任意売却という方法があります。この方法は所有する不動産を早めに手放し、一般的な不動産取引に近い形での取引によって大きく債務整理できる方法です。中長期的に見て債務整理が困難と思われる場合には、有効な手段となります。

任意売却は金融・不動産に関わる交渉を全て代行してくれます

任意売却は所有者自身でも行えますが、専門家を交えて進めることをオススメします。法律・不動産取引などの多岐にわたる専門知識が必要となるため、交渉に多大な労力が掛かってしまいます。そのため、任意売却の専門業者や不動産会社・法律事務所など専門家への依頼するほうが望ましいです。専門家の力を借りることで、より有利な条件での手続きを進めることができます。

任意売却の専門家と呼ばれる人々は、例えば住宅ローンアドバイザーや土地家屋調査士、弁護士、ファイナンシャルプランナー…など様々な専門家が関わります。最初に相談者の状況を伺ったうえで、任意売却はもちろん任意整理や個人再生、民事調停など現状に望ましい債務整理の方法を提案してくれます。

「自宅はまだ売却したくないが、ローンの返済が厳しい状況にある」場合には住宅ローンアドバイザーに相談してみましょう。「一刻も早く不動産を売却してローンによる債務を返済したい」方は、売却専門の不動産会社に相談するとよいでしょう。また、住宅ローンの他にも複数の借り入れがあるため、一括で整理したい場合には弁護士に相談できます。

このように、任意売却以外の債務整理方法も相談できるため、住宅ローン返済に苦慮している場合には早い段階での相談を進めましょう。

なお、住宅ローンを3カ月から6カ月以上滞納したものの返済の手立てがない場合には、任意売却もしくは自己破産するしか方法は残されていないケースが多く見受けられます。その場合でも、専門家との相談を通して「任意売却をすべき」という結論に至ったならば早急に手続きを開始します。

専門家に手続きを依頼する場合には、まず現状で抱えている債務状況やローン返済の状況を確認してもらったうえで、今後の生活に関する希望や要望を伝えて、手続きを進めてもらいます。専門家それぞれ金融機関・サービサー等の債権者や不動産の購入者希望者などとの交渉を進めて、最終的な合意と競売の阻止に向かって対応してくれます。任意売却の決済は債務者の引っ越し完了後に行い、債務の清算を行います。

メリット

住宅ローンによる債務を大きく整理できる任意売却には、競売と比べて大きなメリットが3つあります。

  • 競売よりも高い値段で売却できる
  • 生活再建できる可能性が拡がる
  • 売却者のプライバシーが守られる

1つ目は、任意売却によって高い金額で売却できる点です

一般的な不動産取引と同じ方法で販売や広告するため、時価に近い金額で売却が可能です。競売と比較すると、3~4割高い金額で取引可能です。なお競売では、市場相場の5割から7割程度の取引額に抑えられてしまいます。売却後の残債を大きく清算するためにも、任意売却は最大の債務整理の方法なのです。

2つ目は、任意売却によって生活再建できる余地が残されている点です。

任意売却の交渉が成功した場合には、清算の段階で「引っ越しの費用の控除」や「引越し直後の生活にかかる費用の控除」が行われるケースも残されています。対して競売では強制的に立ち退きが命じられ、一括での債務支払いを求められる点を考慮しても、はるかに生活再建が可能な債務整理方法なのです。

3つ目は、物件を売却した人のプライバシーが守られる点です。

競売にかけられる状態では、インターネット上の競売物件情報サイトなどに掲載されるために、不動産会社や裁判所・金融会社などから様々な連絡がかかる可能性があります。また、執行官による調査と通じて近隣住民への聞き取り調査などによって、地域内で競売にかけられたことが周知されてしまうケースもあります。

以上のポイントを考慮し、債務整理後も続く生活を考えると、任意売却は住宅ローンの債務を整理する最後にして最大の方法なのです。

デメリット

ただし、任意売却にもデメリットが2点あります。

  • 支払遅延によって、金融機関などのブラックリストに掲載される
  • 任意売却を進める際に連帯保証人にも迷惑がかかる

第1に、ブラックリストに掲載されてしまうことです。

 任意売却は住宅ローンの遅延歴が残るため、金融機関の間でいわゆる“ブラックリスト”に掲載されます。ブラックリストに載ることで、数年間はクレジットカードの利用や新たなローンを組むことができなくなります。個人事業者や生活で必要な購入品があるならばできるだけ返済を遅延しない方が望ましいでしょう。

第2のデメリットは、連帯保証人にも迷惑がかかる点です。 任意売却は、連帯保証人の同意がなければ進めることができません。残債を請求されるリスクや金融機関から督促などの連絡が入る点で、迷惑が掛かってしまう点も考慮すべきでしょう。

できるだけ早い段階で専門家に相談し、連帯保証人や家族への心理的負担を掛けないためにも早めの相談を進めましょう。

再スタートを望むなら早めに専門家に相談を!

住宅ローンによる債務を整理するためには、早い段階で専門家への相談がオススメです。任意売却にこだわらず、任意整理や個人民事再生、ほか不動産の買い戻しやリースバックなど様々な方法による生活再建の方法を提案してくれるからです。

最もしてはならない行動は、何もしないことです。目の前にある問題を誰かに相談するだけでも、周囲の人々もまた救われるのです。今後の生活の為にも、まずは専門家への相談を進めましょう。