いよいよ住宅ローンの返済が困難になってきた場合、考えられる解決方法の一つが「民事再生」です。民事再生を利用すると、個人が抱えた債務を原則3年(特別な事情を含めても最長5年)かけて返済を進めることとなり、手持ちの不動産を保持したまま債務整理することができます。

ただし、住宅ローン自体の減額はできない点には注意が必要です。

民事再生を利用するには基本的に「債務総額が5000万円以下」であること、「毎月収入が継続して得られる見込み」があること、「現状を放置することで借入金の返済不能となる危険性があること」以上の3点を満たす場合に限ります。

✔小規模個人再生と給与所得等再生

民事再生には「小規模個人再生」と「給与所得等再生」という2つの方法があります。

まず小規模個人再生は、自営業者や定期的な収入がない方に向けた再生手続です。個人事業者の場合はこの小規模個人再生しか選べません。また、書面決議にて債権者からの反対意見が過半数を超えなければ再生計画が通らない点も注意が必要です。(よほど状況が悪くない限り、不許可されるケースは稀です)

そして給与所得等再生はサラリーマンなど「給与所得」を得ており、その収入が安定している場合に選択できます。こちらは債権者からの同意が必要なく、再生計画を進めることができます。ただし、民事再生法241条の規定で「最低弁済額が高く設定」される必要があるため、小規模個人再生よりも返済額がとても大きくなる可能性があります。

✔住宅を手放さずに済む反面、一定期間の借り入れが不可能に

以上のような特徴をもとに、民事再生の総合的なメリットやデメリットをまとめると以下の通りです。

▶メリット:まずは自宅を売らなくても手続きが可能です。しっかり返済計画に従っている限りは生活環境を守ることができるでしょう。また、ほとんどの場合で債権者の同意が得られる返済方法でもあります。事実、年間約8,000件の民事再生に対して、不許可されたのはわずか4%程度です。

▶デメリット:民事再生が許可されると新規の借り入れが認められなくなります。個人で事業をされている方にとっては大きなデメリットとなるためできるだけ避けたいところです。また、国の機関誌「官報」に掲載され、闇金融業者や信用情報機関・役所の税務担当に情報が知られるリスクがあります。